今日はファンクショナルトレーニングの概論でもお話しした五原則の一つである、「重力の利用」についてです。

重力の利用
ファンクショナルトレーニングは、
人間のパフォーマンスを引き出すための機能的な動作を構築するトレーニングである
ということは以前も述べました。
「機能的」という言葉を考えた時に重力は外せないキーワードになってきます。
私たちが生活している地球には重力が存在します。
重力は地球上の物体を地球に引きつける力で、これのおかげで私たちは地に足をつけて歩くことができています。
しかし、逆に私たちは重力という負荷に逆らわないと立つ・座る・走る・跳ぶなどの動作を円滑に行えません。
体が重力に負けてくると、姿勢不良などのように背骨のラインが崩れていきます。
この背骨のラインを中心に重力下でもしっかり直立できるように働きかけてくれている筋肉を「抗重力筋」と呼びます。
股関節周りや腹筋郡・背筋郡あたりの体幹部の筋肉が挙げられます。
抗重力筋群は骨格を維持するためのものなので、直立しているだけでも緊張する筋肉となります。
しかし、日頃の運動不足やデスクワークの増加、高齢化などの原因から、多くの人が抗重力筋の低下に悩まされています。
抗重力筋の低下による問題は、姿勢不良や血液循環の滞りなどによる肩こり・腰痛が最もメジャーでしょうか。
さて、話は戻ってファンクショナルトレーニングです。
機能的な動作を獲得するためになぜ、重力の利用が大事なのでしょうか。
ここまで読み進めていただいた方にはわかると思います。
動作は重力下において行われるからです。
人間は特異性の原則に基づき、筋肉(正確には脳)が動作を覚え込んでくれます。
特異性の原則に基づけば、行ったことのある動作は効率化されていきます。
同じトレーニングを行うにしても重力を利用して行うものと行わないものとでは、当然重力を考慮したトレーニングの方が、動作には活用しやすい筋肉ということになります。
では、比較的分かりやすい腹筋運動で考えたいと思います。
クランチとプランク
どちらも有名なお腹を使う種目です。
ファンクショナルトレーニングに用いるとすればどちらが好ましいでしょうか?
重力の利用という原則に当てはめれば、プランクということになります。
クランチは仰向けで行う種目であり、寝転がった時点で抗重力筋はほとんど働くなります。
一方、プランクは重力が重りとなり、それに逆らうように胴体周りを固定するものになるので重力をうまく利用していると思います。
もちろんクランチがダメと行っているわけでもありません。
筋肉の収縮を考えると、腹直筋の起始と停止を最短に縮めることができるクランチは立派な腹筋種目です。
ファンクショナルトレーニング=機能的な動作を手に入れるという目的で考えた時には、少し通常のウエイトトレーニングとは考え方が異なりますよ、というお話しでした。